「ゼロ・ウェイストの街」上勝町の第一線で活躍する若きパイオニア|起業家インタビュー➆|合同会社RDND代表 東輝実さん

今回は起業家さんに新規事業立ち上げにまつわる「知りたかったけど他には載ってない実際のところ」をお届けするインタビュー記事第七弾です!

今回はご自身の出身地でもある、徳島県上勝町を舞台に活躍され、世界からも注目されているINOW(イノウ)プログラムを手がける合同会社RDND(アール・デ・ナイデ)代表、東輝実さんにインタビューさせていただきました。

今世界中で問題視されている環境問題に対し、先駆けとして日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言をしたのがこの上勝町です。

そんな最先端な地域で起業を果たした東さんが手がけるINOWプログラムとはどんな事業なのか、またその起業の軌跡をSIFならではの視点で取材させていただきました。

今起業を夢みている方、何かしたいけど何がしたいかわからない。

そんな方に向けてこの記事を執筆しています。

是非最後までご覧ください。

【プロフィール】

合同会社RDND代表 東輝実さん

  • 2009年 大学在学時学生団体アイセックに所属、ルーマニアインターンを経験
  • 2010年 株式会社トビムシにてインターン
  • 2011年 関西学院大学総合政策学部卒業、上勝町へ帰郷
  • 2012年 合同会社RDND設立
  • 2013年 徳島県上勝町にてカフェ・ポールスター設立
  • 2020年 INOWプログラム提供スタート

  HP:https://inowkamikatsu.com/

目次

RDND代表 東輝実さん│創立までの経緯

起業を決意、そのきっかけとは?

きっかけは、「上勝にかっこいい仕事がなかった」からです。

中学生のとき、NHKで沖縄から横浜までを10日間船に乗りながら環境問題について旅をしようという番組がありました。

アジア7か国から6人ずつ集められた人達がそれぞれ沖縄から横浜までの間で、色々な寄港地に寄りながら先生たちから環境問題の話を聞いて自分たちの未来をどうしていくのかを考えるディスカッション形式のプログラムでした。

私自身もそこに応募し、日本人枠の6人の中に参加させていただくことができました。

ですが、当時私は英語が全く喋れず私以外に選ばれた方達は帰国子女の方ばかりでした。

その当時、初めて東京に来て色んな方達とお話をするという機会もいただいて、上勝にはいない多様な大人に会いましたし、同い年なのに全く違う経験をしてきた人たちに会ったときに凄くショックを受けました。

ですが、その中で私は通訳さんを通してでも上勝が行っている「ゼロ・ウェイスト」のことを紹介していくと、皆が興味を持ってくれ先進的なことをやっていると褒められました。

褒められたのをきっかけに、この町は凄く小さいけど、上勝で具体的に何かやることが世界を変える可能性に繋がると感じたので、このプログラムを終えた時に将来上勝に帰ろうと決めました

自分がした経験と同じようなことを自分の子供にもさせたいからこの町で子育てもしたいと考え、且つ私の思うカッコいい仕事というのはクリエイティブなことがしたかったのだと経験を経て思いました。

世界に通じる徳島県上勝町の「ゼロ・ウェイスト」

プロフィールの中にもあるルーマニアでの海外インターンや先述したNHKの番組での経験の中で、上勝のゼロ・ウェイストは世界に通じると感じました

上勝で行っているごみの分別方法をルーマニアへ輸出してみたり、現地のリサイクル屋さんと協力してYoutubeを撮影して配信をしたりしていました。

その中で国境を超えて上勝が目指しているものだったり、上勝の文化や取り組んでいる事業を海外の方に受け入れてもらえるというような手ごたえを凄く感じていたので、上勝がやっていることに秘められた可能性を感じながら帰ってきました。

それをきっかけに自分で上勝のことを広げていくとか、ゼロ・ウェイストのことを広げていくとかが自分自身こんなにも興味があるのかと気付いたので、そこで自分の強みとか、上勝とは何かみたいなことを考えるきっかけにはなりました。

インターンで感じた「上勝の価値」が、会社設立の第一歩

私は2つのインターンを経験しました。

1つは「ルーマニアでのインターン」、もう一つは「株式会社トビムシでのインターン」です。

この2つのインターンでの経験が起業しようと思ったきっかけ、会社設立の第一歩だと思っています。

ルーマニアではこれまでに無い環境で新たな刺激を受けました。

ルーマニアにインターンしていたとき、ルームメイトだったコスタリカ人の子が自分の国に帰って就職すればすごく良い企業に就けたのに、彼女はその道を選んでいませんでした。

理由を聞くと、「色々な国に行ってそこで生活や仕事をすることでもっとその国のことを理解することができる。そういうことに時間や人生を使いたい。私はお金よりも経験を選ぶ。」と彼女は言いました。

その価値観が「かっこいい仕事をしたい」という目標に通ずるものがあり、新しい刺激を受けました。

株式会社トビムシのインターンを経て気付いた上勝の価値

株式会社トビムシのインターンでは地方・地域を知ってもらうためにアンテナショップの運営に携わっていました。

色んな地域の商品を売ってみて、都会の人がどれくらいの値段をつけどんな反応があるのかを、産地の人にフィードバックする仕事をしていました。

例えば、コケ玉一つにしても都会では5,000円するものが上勝などの地方だと同じものが500円ほどで買えるのを知りました。

その経験がきっかけで地方や上勝の価値に気付き、上勝にはまだまだ可能性があり面白そうだなと思ったのを覚えています。

合同会社RDND設立

インターン終了後、大学を卒業しそのまま上勝に帰りました。それが20111年の話です。

翌年2012年に、合同会社RDND(あーるでないで)を創業しました。

コケ玉のように、上勝にはすごく良い物が、価値のあるものがあるじゃないかというそんな当たり前のことを、上勝、徳島の方言で「あるで、ないで」と言います。

それをもじってRDNDと名づけました。

RDNDの当時掲げた事業目標がカフェの設立、上勝を知ってもらえるようなイベントや企画の運営、オンラインショップの運営でした。

実際に2013年からカフェ「ポールスター」を設立し今年9年目になります。

そのカフェを通じて上勝という街を五感で感じられるショールームを作るというコンセプトのもと、まずはそのカフェを始めました。

そしてカフェをやりつつ2020年の7月から新規事業「INOWプログラム」という新しい事業を始め、今はカナダ人のスタッフと共に上勝の体験型ラーニングプログラム事業として展開しています。

「INOWプログラム」とは?

新事業の始まり

「INOWプログラム」とは、既存のものから学ぶというのをベースにして上勝の農家さんのところに参加者を連れていき、上勝の特徴でもある何種類もあるごみの分別を実際に体験してもらったり、上勝で新しい気付きを得てもらうというのがコンセプトです。

事業設立当初のターゲットは上勝に学びにきたい方全般でした。

しかし、今のプログラムは学びというところにフォーカスした部分があるので、高校生とか15歳〜20代の方達をターゲットとしています。

SDGsに興味があったり、最近SDGsを見聞きするけど正直何をやったらいいのかわからないということを実践として学べるような機会として使ってもらいたいと思っています。

そしてそこに対して投資したいという私立の学校もある、ニーズがあるというのもわかったので、それを合致させていきたいなと思っています。

自分自身の価値観を見つけ出す「INOWプログラム」

事業の核となる部分はINOWという由来もそうなんですけど、イノウという言葉は上勝の方言で、「帰ろう」という意味と英語の「I know」自分を知ろうというのをかけINOWプログラムと付けています。

INOWプログラムを通して色々な体験をして理解を深めることで、自分自身は何が豊かだと思っているか、自分は何が大切だと思っているか、自分自身を知ることができるということがこの事業のコアとなっています。

「今まで日常の中では中々見えないような価値観を変える」Transformative learningというものが核となる考えとしてあります。

INOWプログラムの強みとは

一番は私自身が上勝出身というのが大きいと思います。

自らディレクションをしていて、この町のことを考えるというのが、他の企業さんにはない強みかなと思っています。

また、この20年の間に上勝もありがたいことに様々なメディアに取り上げられたりで有名になってきていて海外からの取材も多くあります。

しかし、それに対応できるセクションがそもそも町内には存在しないので、英語での取材は現状全て私達が担っている状況です。

交渉も含め弊社が全て請け負っているので、世界の繋がり、外交的なことが出来ることも強みだと思っています。

スタッフにもカナダ人が2名いるので一人一人の言語もそこで生まれ育ったというようなバックグラウンドが強みとなって直結しているし、会社の価値になっているのが大きいです。

それと同時に、上勝というベースを共有しながら、ここで考えるっていう人達がいるっていうのが一番の価値だと思っています。

「INOWプログラム」マネタイズの壁

正直マネタイズは本当に難しいです。

これまでINOWプログラムは、ひとりひとりのお客様にカスタマイズした体験というものを売りにしていましたが、社会に対するインパクトが薄いと思うこともありました。

そこで現在では上勝町内のホテルや視察の窓口となる町内企業と連携し、研修やコンテンツ提供を行ったり、修学旅行生に対してWSを実施するなどを、試行錯誤は続いています。

 

企業や学生のような団体だと1回約20〜40人の参加者の方がいらっしゃるので、コンスタントに団体様の予約が入ると財政も安定します。

ですので、今は団体客を獲得できるように企業や団体向けの新しいコンテンツを提供することを新しく始めていますが、私たちが提供したい価値は何かと、収益だけで考えないようにも、同時に努力しています。

コロナの影響を受け「INOWプログラム」はどう変わっていくのか?

コロナをきっかけに「上勝のユニークネス」を改めて見直したり、新たに発見したりということに注力しています。

自分自身がいかに上勝の良さや伝統を伝えられるかが価値となる、それが商品となるので、そのユニークネスを作っておかないと、表層的なコンテンツの提供だと自分たちも苦しくなるし競争優位性が見出せなくなるので、ここで強化をさせています。

あとは、収益化という部分でオンラインレクチャーの事業を強化しています。

コロナという影響を受け、このオンラインレクチャー含め、オンラインで出来る事業を整備しつつINOWプログラムという事業の価値をどんどん高めていくということをしています。

まとめ

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

デジタル社会となったこの時代にも、日本の良き伝統や私達がまだ知らない地方・地域の良さ、それを自分の体験を通して、身をもって体験できるINOWプログラム。

私自身、インタビューを通じて凄く魅力的な事業だと思いましたし、そんな体験をできる機会が大人になればなるほどなくなってしまうので、大人にとっても癒しの場所ともなるし、何かインスピレーション、刺激を受ける新しい場所になる気がします。

また子供たちの遊び方もゲームやYoutubeなどデジタルへと移行している現代社会において、農家さんやその地域に触れられるというのは貴重な体験だと思いました。

まだまだ語れる魅力はいっぱいありますが、皆様自身でHPを見たり実際に上勝に訪れて体験してみて下さい!
そして、このINOWプログラムを読者の皆様にも応援していただけたら幸いです。

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